気体分子の運動論

 理想気体

  気体分子が壁に及ぼす圧力を考えた上で、 ポイルシャルルの法則と照らし合わせることにより、 温度 $T$ と気体のエネルギー $U$ との間の対応関係を導出することができる。

$$ U= \frac{3}{2} RT $$
ここで $U$ は1モルあたりの気体の平均運動エネルギーである。
最終更新 2015 年 2月 2日


  導出

  立方体の箱の中に閉じ込めらた気体が壁に及ぼす圧力を求める。 箱の内壁の一面が $x$ 軸に垂直であるとし、 質量 $m$、速度 $\mathbf{v} = (v_{x},v_{y},v_{z})^{T}$ を持つ一個の分子がこの壁に衝突し、 衝突前後で速度の $x$ 成分が $v_{x}$ から $-v_{x}$ に変化した と仮定する。このとき運動量保存法則によって、 壁が受ける運動量は $$2mv_{x}$$ である。
  単位体積あたりに速度 $\mathbf{v}$ の分子が $n_{\mathbf{v}}$ 個あるとすると、 時間間隔 $\Delta t$ の間に単位面積を持つ壁の一部分 $A$ に衝突する速度 $\mathbf{v}$ の分子数は、 $A$ を底面とし、高さを $v_{x} \Delta t$ とする柱に含まれる分子数に等しい
  柱の体積が $v_{x} \Delta t$ であるので、その数は $ n_{\mathbf{v}} v_{x} \Delta t $ である。 従って、これらの分子が単位時間あたりに領域 $A$ に与える運動量 $p (\mathbf{v})$ は、 $$ p (\mathbf{v}) = (2mv_{x}) ( n_{\mathbf{v}} v_{x} \Delta t )/\Delta t = 2m v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} $$ である。
  領域 $A$ が受ける単位時間あたりに運動量の合計(すなわち領域 $A$ に加わる圧力 $P$)は、 全ての速度に渡って運動量 $p (\mathbf{v})$ を足し合わせたものであるので、 $$ P = \sum_{\mathbf{v} | v_{x}>0} 2m v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} = 2m \sum_{\mathbf{v} | v_{x}>0} v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} $$ である。ここで $ \sum_{\mathbf{v} | v_{x}>0}$ は 速度の $x$ 成分が正である分子に対して総和をとることを表す。正でない分子は壁から遠ざかる方向に運動するので 総和に加えていない。

  上の式において、速度の $x$ 成分が正でない分子に対する総和と正である分子に対する総和が等しいと仮定する。すなわち、 $$ \sum_{\mathbf{v} | v_{x}\leq 0} v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} = \sum_{\mathbf{v} | v_{x}>0} v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} $$ を仮定すると、次の関係を得る。 \begin{eqnarray} \sum_{\mathbf{v} } v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} &=& \sum_{\mathbf{v} | v_{x}\leq 0} v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} + \sum_{\mathbf{v} | v_{x}>0} v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} \\ &=& 2\sum_{\mathbf{v} | v_{x}>0} v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} \end{eqnarray} これより、 $$ P = \sum_{\mathbf{v} | v_{x}>0} 2m v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} = m \sum_{\mathbf{v}} v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} $$ を得る。

  ここで単位体積当たりの分子数を $n$、 $v_{x}^2$ の平均値を $\langle v_{x}^2 \rangle$ とすると $ \langle v_{x}^2 \rangle = \frac{1}{n}\sum_{\mathbf{v}} v_{x}^2 n_{\mathbf{v}} $ であるから $$ P = m n \langle v_{x}^2 \rangle $$ を得る。 $\langle v_{x}^2 \rangle$ が他の方向の平均値と等しく $\langle v_{x}^2 \rangle = \langle v_{y}^2 \rangle = \langle v_{z}^2 \rangle$ が成り立つと仮定すると、 $$ \langle \mathbf{v}^2 \rangle = \langle v_{x}^2 + v_{y}^2 + v_{z}^2 \rangle = \langle v_{x}^2 \rangle +\langle v_{y}^2 \rangle+\langle v_{z}^2 \rangle = 3\langle v_{x}^2 \rangle $$ であるので、 $$ P = \frac{1}{3} nm \langle \mathbf{v}^2 \rangle $$ を得る。

  箱の体積を $V$、分子の総数を $N$ とすると、$nV = N$ であるので、上式の両辺に $V$ を掛けることにより、 $$ PV = \frac{1}{3} Nm \langle \mathbf{v}^2 \rangle $$ を得る。ここで1モルあたりの分子数を $N_{0}$ とし、 $$ PV = \frac{2}{3} \frac{N}{N_{0}} \Big( \frac{1}{2} N_{0} m \langle \mathbf{v}^2 \rangle \Big) $$ と表すと、$N/N_{0}$ は箱の中の分子のモル数であるので、これを $\nu$ と表すと、 $$ PV = \frac{2}{3} \nu U $$ を得る。ここで $$ U = \frac{1}{2} N_{0} m \langle \mathbf{v}^2 \rangle $$ は、1モルの気体の持つ運動エネルギーの平均値である。

  理想気体の状態方程式


  箱の中の圧力と体積の積 が温度 $T$ に比例すると仮定する(実験によって裏付けられている経験則であり、ボイルシャルルの法則と呼ばれる)。すなわち、 $ PV \propto T $ を仮定すると、上の結果から $$ \frac{1}{2} N_{0} m \langle \mathbf{v}^2 \rangle \propto T $$ を得る。比例係数を $$ \frac{1}{2} m \langle \mathbf{v_{x}}^2 \rangle = \frac{1}{2}k_{B}T $$ を満たすように定義すると、 $$ U= \frac{1}{2} N_{0} m \langle \mathbf{v}^2 \rangle = \frac{3}{2} N_{0} m \langle \mathbf{v_{x}}^2 \rangle = \frac{3}{2} N_{0} k_{B}T $$ を得る。$N_{0} k_{B} = R$ とすると、 $$ U= \frac{3}{2} RT $$ $$ PV = \frac{2}{3} \nu \Big( \frac{3}{2} RT \Big) = \nu RT $$ を得る。第二式を理想気体の状態方程式といい、 $R$ は気体定数とよばれる。







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