直和空間の定義と例、および和空間との違い

最終更新 2018年 2月18日
  $V_{1}$ と $V_{2}$ をベクトル空間 $V$ の部分空間とするとき、$V_{1}$ のベクトルと $V_{2}$ のベクトルの和の全体から成る集合
和空間
もまた $V$ の部分空間となる。これを和空間 $V_{1}+V_{2}$ という。
  また、和空間 $V_{1}+V_{2}$ の任意のベクトル $\mathbf{v}$ が、 $V_{1}$ のベクトルと、$V_{2}$ のベクトルによって、一意に
と表されるとき、和空間 $V_{1}+V_{2}$ が直和空間であるといい、
直和空間
と表す。
  以下に例を記す。

  解説

和空間であって直和空間でない例
  正規直交系
によって構成される $3$ 次元ベクトル空間を $V$ とする ( いわゆる $xyz$ の $3$ 次元空間である )。
  $(1)$ のうち $ \mathbf{e}_{x} $ と $ \mathbf{e}_{y} $ のみによって構成されるベクトル空間を $V_{xy}$ とする。 $V_{xy}$ は、$V$ の部分空間であり、$xy$ 平面を構成する。
  また、$(1)$ のうち $ \mathbf{e}_{y} $ と $ \mathbf{e}_{z} $ によってのい構成されるベクトル空間を $V_{yz}$ とする。 $V_{yz}$ は、$V$ の部分空間であり、 $yz$ 平面を構成する。
  このとき、和空間 $V_{xy}+V_{yz}$ の任意のベクトル $\mathbf{v}$ は、
と表される。
  $\mathbf{v}_{xy} \in V_{xy}$ であるので、 $\mathbf{v}_{xy}$ は $ \mathbf{e}_{x} $ と $ \mathbf{e}_{y} $ の線形結合で表すことができる。 同じように、 $\mathbf{v}_{yz} \in V_{yz}$ であるので、 $\mathbf{v}_{yz}$ は $ \mathbf{e}_{y} $ と $ \mathbf{e}_{z} $ の線形結合で表すことができる。 すなわち、
と表せる。 ここで $\alpha_{x}$, $\alpha_{y}$, $\beta_{x}$, $\beta_{y}$ は線形結合の係数である。
  これらを用いると、 $\mathbf{v}$ は
と表される。
  一方で、 $ V_{xy}$ のベクトル $\tilde{\mathbf{v}}_{xy}$ を
と定義し ($\gamma_{y}\neq 0$ とする) 、 $ V_{yz}$ のベクトル $\tilde{\mathbf{v}}_{yz}$ を
と定義する。
  これらは、
であり、$(3)$ より、
が成り立つ。 よって、$\mathbf{v}$ には、 $(2)$ と $(4)$ の異なる二通りに表し方があることが分かる。
  以上から、 和空間 $V_{xy} + V_{yz}$ の任意のベクトル $\mathbf{v}$ には、$V_{xy}$ と $V_{yz}$ のベクトルの和による少なくとも二通り表し方 ($(2)$ と $(4)$) が存在するため、 表し方が一意ではない。ゆえに、 和空間 $V_{xy} + V_{yz}$ は直和空間ではない。
和空間であって直和空間でもある例
  正規直交系 $(1)$ によって構成される $3$ 次元ベクトル空間を $V$ とする。
  $(1)$ のうち $ \mathbf{e}_{x} $ のみによって構成されるベクトル空間を $V_{x}$ とする。 $V_{x}$ は、$V$ の部分空間であり、$x$ 軸を構成する。
  $(1)$ のうち $ \mathbf{e}_{y} $ のみによって構成されるベクトル空間を $V_{y}$ とする。 $V_{y}$ は、$V$ の部分空間であり、 $y$ 軸を構成する。
  $(1)$ のうち $ \mathbf{e}_{z} $ のみによって構成されるベクトル空間を $V_{z}$ とする。 $V_{z}$ は、$V$ の部分空間であり、 $z$ 軸を構成する。
このとき、和空間 $V_{x}+V_{y}+V_{z}$ の任意のベクトル $\mathbf{v}$ は、
と表される。
  $\mathbf{v}_{x} \in V_{x}$ であるので、 $\mathbf{v}_{x}$ は $\mathbf{e}_{x}$ の線形結合で表すことができる。 同じように、 $\mathbf{v}_{y} \in V_{y}$ であるので、 $\mathbf{v}_{y}$ は $\mathbf{e}_{y}$ の線形結合で表すことができ、 $\mathbf{v}_{z} \in V_{z}$ であるので、 $\mathbf{v}_{z}$ は $\mathbf{e}_{z}$ の線形結合で表すことができる。 すなわち、
と表すことができる。 ここで $\alpha_{x}$, $\alpha_{y}$, $\alpha_{z}$ は線形結合の係数である ( ここでは単なる定数倍の定数 )。
  これらを用いると、 $\mathbf{v}$ は
と表される。
  この表し方は一意である。それを見るために、$\mathbf{v}$ に他の表し方
があると仮定する。
  先ほどと同じように、 $\tilde{\mathbf{v}}_{x} \in V_{x}$, $\tilde{\mathbf{v}}_{y} \in V_{y}$, $\tilde{\mathbf{v}}_{z} \in V_{z}$ であることから、
と表すことができる。 ここで $\tilde{\alpha}_{x}$, $\tilde{\alpha}_{y}$, $\tilde{\alpha}_{z}$ は線形結合の係数であり、 $(5)$ と $(7)$ が別の表し方であると仮定したので、
である。
  これらを用いると、 $\mathbf{v}$ は
と表される。 これと $(6)$ との差をとると、
となるが、 $\mathbf{e}_{x} $, $\mathbf{e}_{y} $, $\mathbf{e}_{z} $ が線形独立であるので、
が成立する。 これは $(8)$ と矛盾するので、 $\mathbf{v}$ に $(5)$ 以外の別の表し方はないことが示された。 すなわち、 $\mathbf{v}$ の表し方は一意である。
  以上から、 和空間 $V_{x} + V_{y} + V_{z}$ の任意のベクトルが、 $V_{x}$ と $V_{y}$ と $V_{z}$ のベクトルの和によって一意に表されることが示されたので、 和空間 $V_{x} + V_{y} + V_{z}$ は、直和空間
である。