行列式は固有値の積に等しい  

  任意の $n$ 次正方行列 $A$ の行列式は、$A$ の固有値を全て掛けた積に等しい。すなわち、
行列式は固有値の積
が成立する。
  ここで $\lambda_{1}, \lambda_{2}, \cdots, \lambda_{n}$ は、 $A$ の固有値である。

  証明

  $A$ の固有ベクトルと固有値とは、
を満たす
のベクトル $\mathbf{u}$ と、値 $x$ である。
  $(1)$ は、
と表してもよい。 この式は同次連立一次方程式であるので、 $(2)$ を満たす解を持つこと(自明な解 ($\mathbf{x}=\mathbf{0}$) のみではないこと)と、 係数行列の行列式が $0$ であることが同値であることが知られている (証明は同次連立一次方程式が自明な解以外の解を持つ場合を参考)。 したがって、
が成立する。
  $A$ が $n$ 次正方行列であるので、 $(3)$ の左辺は $x$ の $n$ 次多項式である (行列式の定義を参考)。 一般に $n$ 次多項式は、 $n$ 個の積による因数分解が可能であるので (因数定理を参考)、 $(3)$ の左辺を
と表すことができる。
  これと $(3)$ から、
行列式は固有値の積06
が成立するので、
である。すなわち、$\lambda_{1}, \lambda_{2}, \cdots \lambda_{n}$ は、 $A$ の固有値である。
  ところで、 $(4)$ は任意の $x$ に対して成立するので、 $x=0$ の場合も成立する。 この場合、$(4)$ は、
と表される。 この式の左辺は、 行列式の定義から、
であり、 右辺を整理すると、
である。 ゆえに、
が成立する。
  よって、 $A$ の行列式は $A$ の固有値を全て掛けた積に等しい。
  例:
  行列
の行列式は、
である。 一方で、 固有値は、
であるので、 固有値の積が $-1$ である。 よって、 $(5)$ が成立する。