列に関する余因子展開の証明

最終更新 2018年 5月27日
  $n \times n$ の正方行列 $A$ の $ij$ 成分 $A_{ij}$ に着目し、 $A$ から $i$ 行と $j$ 列を取り除いた行列を小行列 $M_{ij}$ とする。 すなわち、
とする。
  このとき、 $A$ の行列式を
列の余因子展開
と表せる。
  これを (第 $j$ 列に関する) 余因子展開という。 ここで $|M_{ij}|$ は、 小行列 $M_{ij}$ の行列式である。

  証明

    行列 $A$ の $i$ 行 $j$ 列成分を $A_{ij}$ と表すとき、 行列 $A$ は、
と表される。 この中の 第 $j$ 番目の列ベクトル $\mathbf{a}_{j}$ とする。 すなわち、
とする。 この表記を用いると、 行列 $A$ を
と表すことができる。
  列ベクトル $\mathbf{a}_{j}$ を
と和に分ける。 右辺の各項を
と定義すると、
と表せるので、 $A$ の行列式は
と表される。
  ここで 列ベクトルが和で表される行列の行列式が、 和の各項を列に持つ行列式の和で表される性質に着目する。 すなわち、
とできることに着目する。 この性質を用いると $|A|$ を
と行列式の和に分けることができる。
  この中の第 $j$ 項の行列式を $\alpha_{ij}$ と置く。 すなわち、
と置く。 こうすると $|A|$ は
と表される。
  一般に行ベクトルを入れ替えた行列式は、 もとの行列の行列式と符号だけ異なるので、 $\alpha_{ij}$ の $i-1$ 行と $i$ 行を入れ替えた行列式は、$\alpha_{ij}$ と符号だけ異なる行列式になる。 よって、
が成り立つ。
  同様に、右辺の行列式 の $i-2$ 行と $i-1$ 行を入れ替えた行列式は、 もとの行列式と符号だけ異なるので、
が成り立つ。
  このような行の入れ替え操作を繰り返し、 $A_{ij}$ を含む行を 1 行目まで移動させることにより、
となる。
  次に列ベクトルの入れ替えを行う。 一般に列ベクトルを入れ替えた行列式は、 もとの行列の行列式と符号だけ異なるので、 上の行列式の $j-1$ 列と $j$ 列を入れ替えた行列式は、符号だけが異なる行列式になる。 よって、
が成り立つ。
  同様に、 右辺の行列式 の $j-2$ 列と $j-1$ 列を入れ替えた行列式は、 もとの行列式と符号だけ異なることから、
が成り立つ。
  このような列の入れ替え操作を繰り返し、 $A_{ij}$ を含む列を 1 列目まで移動させると、
を得る。
  右辺の行列式では、1 列めの列ベクトルの第 2 成分以降が $0$ になっている。 このような行列式は、 1 行 1 列の成分と、 1 行と 1 列を除いた小行列の行列式の積に等しい (行列式の定義から証明できる。 詳細はこちら)。 これを用いると、
となる。
  右辺の行列式は、 行列 $A$ から $i$ 行目と $j$ 列目を取り除いた小行列 $M_{ij}$ の行列式である。 よって、
と表される。
  この関係が $(*)$ の各項で成立する。 ゆえに $|A|$ を
と表すことができる。 これを行列式 $|A|$ の第 $j$ 列に関する余因子展開という.