コレスキー分解の証明

最終更新 2018年 6月13日
  行列 $A$ が LU分解可能であり、 実対称行列であるとき、 $A$ を下三角行列 $C$ に よって、
コレスキー分解
と表せる。 これを $A$ のコレスキー分解 (Cholesky decomposition) と呼ぶ。

  証明

  $n$ 次正方行列 $A$ が LU分解可能であるならば、 $A$ を $n$ 次の下三角行列 $L$ と上三角行列 $U$ の積によって、
と表せる。 ここで、 $L$ は対角成分が $1$ の下三角行列である。すなわち、
という形で表せる行列である。 一方、 $U$ は、 対角成分が $0$ でない上三角行列である。 すなわち、
という形で表せる行列である ($u_{ii} \neq 0 $)。
  従って、 $L$ の各成分は、
を満たし、 $U$ の各成分は、
を満たす。 ここで、 $i, j = 1,2,\cdots, n$ である。
  これらを用いて、 行列 $A$ が実対称行列である条件
を満たすならば、 $L$ と $U$ の各成分の間に
の関係が $i = 1, 2, \cdots, n-1$ に対して成立することを帰納法によって証明する。 ただし、 それぞれの $i$ に対して $j = i+1, i+2, \cdots, n$ であるものとする。
  行列 $A$ の $1$ 行 $j$ 列の成分は、 $(1)$ を用いると、
と表せるが、 $(2)$ から、
であるので、
となる。 ここで、 2 つめの等式では $(3)$ を用いた。
  一方で転置行列 $A^{T}$ の $1$ 行 $j$ 列成分は、 転置行列の定義から、
と表せるが、 $(3)$ から
であるので、
となる。ここで、 2 つめの等式では $(2)$ を用いた。
  したがって、 $A=A^{T}$ であるならば、 $(5)$ と $(6)$ から、
が成り立つ。 ゆえに、 $i=1$ の場合に、 $(4)$ が成り立つ。
  $i=m$ の場合に $(4)$ が成り立つと仮定する。 すなわち、
が $j = m+1, m+2, \cdots, n$ に対して成り立つとする。
  この条件の下で 行列 $A$ の $m+1$ 行 $j$ 列成分 $(m+1 < j)$ に着目すると、 $(1)$ から、
であるが、 $k= m+1$ の項を分けて表すと、
と表せる。 ここで、 $(2)$ から、
であるので、
と表せる。 二つ目の等式では、 $(3)$ を用い、 三つ目の等式では、 $(8)$ を用いた。
  一方、 転置行列 $A^{T}$ の $m+1$ 行 $j$ 列成分は、 転置行列の定義と $(1)$ から、
であるが、 $k= m+1$ の項を分けて表すと、
と表せる。 ここで、 $(3)$ から、
であるので、
と表せる。 二つ目の等式では $(2)$ を用い、 三つ目の等式では $(8)$ を用いた。
  したがって、 $A = A^{T}$ であるならば、 $(9)$ と $(10)$ が等しいので、
が成り立つ。 右辺の $\Sigma$ 部分と右辺の $\Sigma$ の部分が等しいので、 これより、
を得る。 ゆえに、 $(4)$ は、 $i= m+1$ の場合にも成立する。
  以上から、 数学的帰納法により、 $(4)$ は、すべての $i = 1, 2, \cdots , n-1$ に対して成立する。
  $(4)$ を用いると、 行列 $L$ は、
と表される。 ここで、 対角行列 $D$ を
と定義すると、
となる。 右辺に現れた下三角行列を
と定義すると、
と表される。
  また $D$ の逆行列 $D^{-1}$ は、
であるので、
となる。 右辺に現れた上三角行列は、 下三角行列 $C$ の転置行列 $C^{T}$ であるので、 この関係は、
と表される。
  以上から $(1)$ $(11)$ $(12)$ によって、 行列 $A$ は、
と分解できる。 すなわち、 下三角行列 $C$ とその転置行列 $C^{T}$ の積で表すことができる。