任意のベクトルを含む基底

  $\mathbf{x}$ を $n$ 次元ベクトル空間 $V$ の $0$ でない任意のベクトルとするとき、 $V$ の中には、$\mathbf{x}$ を含む互いに線形独立なベクトル $n$ 個のベクトル

任意のベクトルを含む基底00

が存在する。
  すなわち、 ベクトル空間には、$0$ でない任意のベクトルを含む基底が存在する。
最終更新 2016年 5月 3日


  証明  

  ベクトル空間 $V$ の任意のベクトルを $\mathbf{x}$ とし、 $V$ の基底を

任意のベクトルを含む基底01

とする。 $(1)$ に含まれるどれかの $\mathbf{v}_{i}$ と $\mathbf{x}$ が等しい場合、 $(1)$ が $\mathbf{x}$ を含む互いに線形独立なベクトル $n$ 個のベクトルになるので、 上の主張が成立する。
  そこで、$(1)$ に含まれるどの $\mathbf{v}_{i}$ とも $\mathbf{x}$ が等しくない場合を考える。 $(1)$ は $V$ の基底であるので、$\mathbf{x}$ は $(1)$ の線形結合によって表されうる。すなわち、

任意のベクトルを含む基底02

と表せる。
  $\mathbf{x} $ は $0$ ではないので、全ての $c_{i}$ が 0 であるということはない。 そこで、ここでは、

任意のベクトルを含む基底03

であるとする。
  ここで

任意のベクトルを含む基底04

が満たされると仮定すると、$(2)$ によってこの式は、

任意のベクトルを含む基底05

と表される。$(1)$ が互いに線形独立であるので、各係数は $0$ に等しい。すなわち、

任意のベクトルを含む基底06

が成立する。 $c_{n}\neq 0$ なので、最後の式から $d_{n} = 0$ を得る。これを他の式に代入すると、 $d_{1} = d_{2} = \cdots = d_{n-1} = 0 $ が示される。
  したがって、$(4)$ を仮定することにより、$d_{1} = d_{2} = \cdots = d_{n-1} = d_{n}=0 $ が成立することが示されたので、

任意のベクトルを含む基底07

は、互いに線形独立である。
  以上より、$(1)$ に含まれるどの $\mathbf{v}_{i}$ とも $\mathbf{x}$ が等しくない場合にも、 $\mathbf{x}$ を含む互いに線形独立な $n$ 個のベクトルが存在することが示された。

(ここでは、$(3)$ を仮定して証明を行ったが、これ以外の $c_{i}$ を $c_{i} \neq 0$ と仮定しても、同様の証明が可能である。)

  正規直交系を構成する  

  上の議論に加えて、内積の定義されているベクトル空間では、 任意のベクトル $\mathbf{x}$ を規格化したベクトルを含む互いに直交する $n$ 個の単位ベクトルが存在することが示される。
  上の議論により、 $n$ 次元ベクトル空間 $V$ には、 任意のベクトル $\mathbf{x}$ を含む互いに線形独立な $n$ 個のベクトルが存在する。これを

任意のベクトルを含む基底08

とする。
  グラムシュミットの直交化法を使うと、 互いに線形独立なベクトルから正規直交系を定義することができるので、 $(5)$ から正規直交系を定義することができる。 直交化法には、どのベクトルから順番に直交化させて行くかという自由度があるが、 $(5)$ で並んでいる順番で直交化させることにより、 $ \mathbf{x} $ が規格化されるように正規直交系を構成することが可能である。すなわち、

任意のベクトルを含む基底09

によって $ \mathbf{x}_{1}, \mathbf{x}_{2}, \cdots, \mathbf{x}_{n} $ を定義すると、これらは、 $ \mathbf{x} $ を規格化したベクトル $ \mathbf{x}_{1} $ を含む正規直交系になる。







ページのトップへ戻る