随伴行列の固有値  

最終更新 2017年 12月2日
  行列 $A$ の 随伴行列 $A^{\dagger}$ の固有値が、 $A$ の固有値の複素共役であることを証明する。

  証明

  正方行列 $A$ の随伴行列 $A^{\dagger}$ の固有値と固有ベクトルをそれぞれ $\lambda$ と $\mathbf{x}$ とすると、
が成り立つが、 これは
と同次連立一次方程式の形で表される。
  同次連立一次方程式が自明でない解 ($\mathbf{x} \neq 0$ の解)を持つための必要十分条件は、 係数行列の行列式が $0$ になることであるので、 この式から
が成り立つ。 これが随伴行列に対する固有方程式である。
  随伴行列の随伴行列がもとの行列に等しいことから $\lambda I$ は、
であるので、 随伴行列の反線形性 と $I^{\dagger}=I$ から、
が成り立つ。 よって、 固有方程式は、
と表せる。
  また、 一般に随伴行列の行列式はもとの行列の行列式の複素共役であるので、
が成り立ち、 固有方程式を
と表せる。 この結果、 複素共役が $0$ に等しい場合には、もとの複素数も $0$ に等しいこと、 すなわち、
から、
が成立することが分かる。
  これより、 係数行列の行列式が $0$ の同次連立一次方程式が自明でない解を持つことから、 同次連立一次方程式
は $\mathbf{y}\neq 0$ の解を持つ。 この式を書き換えると、
であるため、 $\lambda^{*}$ は $A$ の固有値であることが分かる。
  よって、 $A$ の固有値は $A^{\dagger}$ の固有値 $\lambda$ の複素共役 $\lambda^{*}$ である。 逆に言うと、 $A^{\dagger}$ の固有値 $\lambda$ は $A$ の固有値 $\lambda^{*}$ の複素共役である。
補足:
  本サイトでは、 随伴の記号に $\dagger$ を用い、 複素共役に $*$ を用いているが、 これは物理学や一部の工学の慣習に従っている。 一方で数学の世界では、 随伴の記号に $*$ を用い、 複素共役にバー ( 例: $\overline{A}$ ) を用いることが多い 。