理数アラカルト
ディリクレ核 ~ 定義と性質 ~
目次
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定義
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コサインの和
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指数関数の和
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周期が $2 \pi$
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偶関数
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フーリエ級数との関係
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ディリクレ核の積分
ディリクレ核の定義
次の関数
を
ディリクレ核
(Dirichlet kernel)という。
$n=10$ の場合のディリクレ核
コサインの和による表現
ディリクレ核は
とコサインの和で表せる。
証明
三角関数の加法定理
より、
であるので、
である。 これより、
である。 $m=1$ から $m=n$ までを順番に並べると、
となることから分かるように、 全てを足し合わせると、殆どの項がキャンセルし、
となる。 したがって、
ディリクレ核の定義
から、
が成り立つ。
指数関数による表現
ディリクレ核 .
と指数関数の和によって表される。
証明
オイラーの公式
から
であるが、 これを
ディリクレ核のコサインによる表現
に代入すると、
となる。
周期が $2 \pi$
ディリクレ核の周期は $2 \pi$ である。
証明
定義
に従って計算すると、加法定理から
が成り立つ。
偶関数
ディリクレ核は
偶関数
である。
証明
定義
に従って計算すると、
が成り立つので、偶関数である。
フーリエ級数との関係
積分可能な関数 $f$ によって、フーリエ係数
を定義し、これらによって数列の和
を定義すると、これは
ディリクレ核
を用いて
と表すことが出来る。
証明
フーリエ級数の定義から、
と表せるが、 加法定理を用いて書き直すと、
となる。 最後の等号では、
ディリクレ核がコサインの和で表せること
を用いた。
補足
数列 $S_{n}$ の $n \rightarrow \infty$ の極限
をフーリエ級数という。
フーリエ級数が関数 $f(x)$ に等しいとき、 すなわち、 数列 $S_{n}$ の収束先が $f(x)$ になるとき、
と表し、右辺を $f(x)$ のフーリエ展開と呼ぶ。
ディリクレ核の積分
ディリクレ核の積分は、
である。
証明
コサインの和による表現
を用いると、
である。